地元では「ざまさん」の愛称で親しまれている「坐摩神社」は、高速道路やビルが立ち並ぶ大阪府の中心に鎮座しています。
ご祭神の五柱の神様は、総称して「坐摩大神」と呼ばれ、住居守護の神、旅行安全の神、安産の神として信仰されてきました。
特に安産のご利益で有名なのは、「神功皇后」が安産祈願し、無事にご出産されたこと、近年では「明治天皇」がお生まれなるとき御祈願になられたことによるそうです。
また、「坐摩神社」はとても珍しい形の鳥居があることでも知られています。
大きな鳥居の左右に小さな鳥居が横に連なる造りは、三ツ鳥居、三輪鳥居という様式で、全国でも7つしかないそうです。
【ご利益】安産守護のご利益で有名
ご祭神には五柱の総称である「坐摩大神」をまつっており、昔から宮域を守る神であったことから住居守護のご利益があるとされます。
また、旅行安全のご利益があることでも知られ、万葉集に防人が旅立ちの時に「坐摩大神」に旅の安全を祈願した和歌が残っています。
特に安産守護のご利益があるとされていますが、それは「神功皇后」が安産を祈願し無事にご出産を終えられたことに由来します。
近年では明治天皇の誕生に際しても、宮中から御祈願を受けたことからも、安産祈願の崇敬を集めているのです。
安産の御守もとても人気があり、毎月戌の日には妊婦さんとそのご家族で賑わいます。
独特なご神紋「鷺丸」
ご本殿のいたるところに、美しい鳥のご神紋(その神社固有の紋)が入っていることに気がつかれることと思います。
こちらのご神紋は他に類を見ない、「鷺丸」と呼ばれる独特なもので、「坐摩神社」に古来から伝わる白鷺の紋です。
では、なぜ白鷺なのでしょうか?
「神功皇后」が神さまのお告げにより、松枝に白鷺の群がる場所を選んで「坐摩大神」をまつったことに由来するとか。
境内では、「鷺丸」にちなんで鷺が羽を広げたような花を咲かせる「さぎ草」を育てています。
8月くらいに見頃を迎えますので、時期を合わせて参拝してみるのもおすすめです。参拝した際にはぜひ、ご神紋にも注目してみてくださいね。
陶器職人の守護神「火防陶器神社」
拝殿を奥に進むと、器職人や販売業を営む方々から絶大な信頼を集めている「火防陶器神社」があります。
拝殿脇には青い絵付けの美しい陶器でできた灯篭が。
ここでしか見ることができない珍しいものだそうです。
かつてこのあたりには、約200軒もの陶器問屋が並び、その守護神としてまた、
火除けの神様としておまつりされてきました。
神社は通常南向きか東向きに建築されることが多いのですが、なぜか「火防陶器神社」は西向きに。
それは、陶器問屋が多く立ち並んでいた方向を向いて鎮座しているということです。
「火防陶器神社」を訪れたなら、見逃して欲しくないのが天井。
そこには絵天井ではなく、なんと有田焼、信楽焼、九谷焼など全国の焼き物のお皿で彩られています。
名だたる陶芸家の作品が飾り付けられていてとても豪華な雰囲気です。
ちなみに、三ツ鳥居の近くに鎮座している赤茶色の狛犬は、「火防陶器神社」が境内に鎮座している由縁からか、石造りではなく珍しい陶器製。こちらも注目ですね。
【所在地・アクセス】大阪のビジネス街のど真ん中に鎮座
<所在地・電話番号>
住所:〒541-0056 大阪市中央区久太郎町4丁目渡辺3号
TEL:06-6251-4792
FAX:06-6251-4425
<アクセス>
■電車をご利用の方:
・市営地下鉄「本町駅」15番出口、または21番出口より徒歩約3分
■車をご利用の方:
・阪神高速道路1号環状線信濃橋出口を下りてすぐに左転回
四ツ橋筋に右折し、中央大通との交差点を右折、2つ目の信号を右折
*無料駐車場:普通車5台可
【ご祭神・ご由緒】宮中で天皇の住居を守護する神様をまつる
【ご祭神】
<生井神>
生命力のある井戸水を司る神
<福井神>
幸福と繁栄の井戸水を司る神
<綱長井神>
深く清らかな長寿の井戸水を司る神
<阿須波神>
屋敷を建てるための土地や基礎の足場・足下の神。足の神であり旅の神とされることも。
<波比岐神>
屋敷神、庭の神。境界線を司る神。
五柱を総称して「坐摩大神」と呼ばれています。
聞きなれないかもしれませんが、こちらの「坐摩大神五柱」は宮中で天皇の住居を守護する神様たちとして古来からおまつりされているそうです。
坐摩の語源は諸説ありますが、土地や居住地を守ることを意味する居所知が転じた名称とされ、住まいの守護神、家屋の守護神として信仰を集めています。
【ご由緒】
創祀については諸説ありますが、「神功皇后」が三韓征伐(古代の朝鮮半島の3国を服属下においたとされる戦)から帰還された時、淀川南岸の大江の岸・田蓑島(後の渡辺、石町の地)に、「坐摩大神」をまつったのがはじまりと伝わります。
現在でもそこには、「神功皇后」が帰還した際に腰を下ろしたとされる巨石があり、その土地一帯は「坐摩神社行宮(御旅所)」と称され残っています。
平安時代にまとめられた「延喜式神名帳(当時「官社」に指定されていた全国の神社一覧)」には摂津国西成郡唯一の大社と記されました。
その後、天正11年(1583年)、「豊臣秀吉」が大坂城を築くために、摂津国西成郡の氏神だった「坐摩神社」を、地名とともに現在の地に遷したとされています。
もともと鎮座していた場所が渡辺津(旧淀川河口近くに存在した瀬戸内海沿岸で最大級の港湾)でしたが、遷座の際に地名ごと無くならないよう周辺住民の活動によって渡辺と言う地名が残されたそうです。
なお、宮司は代々渡辺氏が世襲しており、全国の渡辺・渡部等の姓の発祥の地ともいわれています。
【社務所受付時間】
午前9:00~午後5:00
*新型コロナウイルスの影響で流動的なため、事前に電話で確認することをおすすめします。
【御朱印】
「坐摩神社」と境内社「火防陶器神社」の2種類の御朱印を授与していただくことができます。
・社務所にて:午前9:00~午後5:00
・御朱印代:各500円
・オリジナル御朱印帳:1,200円
オリジナル御朱印帳は、太陽をバックに飛び立つ白鷺が描かれた上品なデザイン。
広げると、「神功皇后」が白鷺の多く集まる所に坐摩大神をまつった故事に由来する1枚の絵になります
とても人気があり、売り切れになっている場合もあるそうです。
<鈴守・岩田帯>
「坐摩神社」では、安産のご利益がある「安産鈴守」(初穂料:1000円)と「安産岩田帯」(初穂料:2000円)があります。
それぞれ単品でいただくこともできますが、安産祈願をされた方は授与品としていただくことができるそうです。
岩田帯は腹帯のことで、「子を岩のように丈夫に産み育てる」という意味が込められているとされ、「神功皇后」がご懐妊の折に当時お用いになった岩田帯が伝わっているものだとか。
こちらは、ご利益と一緒に身体的、精神的な安心感も授けていただけそうですね。
【主な祭礼】
夏祭・大阪せともの祭
7月21日・22日・23日
「坐摩神社」の夏祭と、境内社「火防陶器神社」の「大阪せともの祭」が合わせて3日間行われます。
特に「大阪せともの祭」は江戸時代初期から受け継がれてきた、300有余年の歴史と伝統行事で、茶碗供養とともに夏の風物詩として賑わいを見せます。
平成21年(2009年)には「大阪市無形民俗文化財」にも指定されました。
発祥は、陶器問屋たちが集まり、今で言う見本品を安く販売したことだそうです。
現在は、茶碗供養の他にも境内では陶器市が開かれ、たくさんの陶器のお店が並びいつもと違った雰囲気が楽しめます。
まとめ
「ざまさん」の名で親しまれている「坐摩神社」は、ご祭神の「坐摩大神」にちなみ住居守護、旅行安全、安産の神として信仰されています。
特に、「神功皇后」が安産祈願をしたことから安産のご利益が有名で、「明治天皇」がお生まれになるときにも宮中から安産の御祈願があったそうです。
高速道路や幹線道路が走り、ビルなどが立ち並ぶ騒々しいエリアにある「坐摩神社」ですが、「都会のオアシス」的な空間。
静かな境内では、全国に7つしかないとても珍しい様式の「三ツ鳥居」や、陶器製の狛犬が迎えてくれます。
また、「火防陶器神社」の全国の焼き物のお皿で彩られた天井は必見です。
大阪の発展を見守ってきた「坐摩神社」へ参拝し、都会の真ん中でほっと一息つける時間を過ごしてはいかかでしょうか。