伊勢神宮の神宝「八咫鏡」と同等とされる鏡をご神体とする「日前神宮・國懸神宮」。
日本で唯一、境内に2つの神宮が存在し、総称して「日前宮」あるいは、かつての地名から「名草宮」とも呼ばれています。
創建は共に約2600年前とされ、最も古い神社のひとつ。
神職である紀氏一族は、皇族をのぞけば日本最古の家系とされているそうです。
両神宮は、良縁を結び、結婚の徳を授かり、家内安全のご利益をいただけることで知られ、古来より篤く信仰されてきました。
初詣に、和歌山市内にある、「日前神宮・國懸神宮」、「竈山神社」、「伊太祁曽神社」に参詣する「三社参り」が今でも習わしとして残っていて、正月三が日には、約30万人の参拝者が訪れるそうです。
【ご利益】あらゆる福徳、招福のご利益があるとされる
「日前神宮」の主祭神である「日前大神」は、「天照大御神」の別名とされています。
太陽神であることから、全ての人々に活力を与え、良縁を結び特にうけい(結婚)の徳を授け、家内安全をお守りいただけるというご神徳が古くから信仰されているそうです。
そして、あらゆる福徳、招福のご利益があるとされます。
一緒にまつられている知恵の神様「思兼命」にあやかって、学業向上にもご利益があるそうです。
真っ白な鳥居をくぐり、参道をまっすぐ進むと左右の分かれ道があります。
境内には2つの神宮があり、2600年もの間守られたきた神域の鎮守の杜には、強いご神気が満ちています。
向かって左手に「日前神宮」、右手に「國懸神宮」。両社とも同格で、どちらを先に参拝しても良いとされています。
末社「深草神社」で病気平癒を祈願
末社「深草神社」のご祭神には「伊弉諾尊」と「伊弉冉尊」の御子の「野槌神」をまつります。
草や野に関するすべてを司り守護する神です。
古来より牛は神の使いとされていることから、牛の置物が整列して並べてられています。
神聖なる牛が草を食むことから、瘡(皮膚にできるできもの・腫物)を食べてくれるということで、「病気平癒」の高いご神徳があるそうです。
商売繁盛のご利益には末社 「市戎神社」
商売繁盛を願う方が奉納された幟が印象的な「市戎神社」。
ご祭神には蛭子神=えびす様をまつります。
もともと社の近くで「市」がとても賑わったことから、次第に市のえべっさん、市えびすと呼ばれるようになったそうです。
芸者衆はじめ、えべっさんの縁起にあやかりたい沢山の人々が、宝恵かご(西日本の神社周辺で行われる駕籠の行列)に乗って参拝し、相当なにぎわいをみせていたと伝わります。
今も残る由緒ある習わし「三社参り」
古い時代から地元和歌山では、初詣に「和歌山三社参り」をすることが習わしとされ、今も風習が残っています。
「日前神宮・國懸神宮」を含め、和歌山市内にある「竈山神社」、「伊太祁曽神社」の三社を巡るもの。
それぞれが古事記や日本書紀に書かれているほど歴史は古く、「日前神宮・國懸神宮」と「伊太祁曽神社」は、地域で一番社格が高いとされてきた「一之宮」です。
三社を結ぶ道は古くからの巡礼の道で、「たま駅長」が有名な和歌山電鐵貴志川線(通称・たま電車)も、古くは三社参りのために敷かれた鉄道でした。
和歌山電鐵貴志川線には、1日乗り放題のお得な「一日乗車券」があり、三社に参詣する時にはとても便利です。
【所在地・アクセス】和歌山市内に鎮座
<所在地・電話番号>
住所:〒640-8322 和歌山市秋月365
TEL:073-471-3730
FAX:073-474-3869
<アクセス>
■電車をご利用の方:
・JR「和歌山駅」から9番線貴志川線乗り換え「日前宮駅」下車、徒歩約1分
または
・JR「和歌山駅」東口バスターミナルより和歌山バスにて「日前宮駅」下車すぐ
■車をご利用の方:
阪和自動車道「和歌山IC」から約5分
・和歌山ICで降り、国道24号を市街方面へ進み、花山交差点を直進
・吉野家・ローソンを通過し、とんかつ松のや(左)・トヨタ(右)の信号を左折
・和歌山電鉄貴志川線沿いの道路(136号線)との交差点で左折し直進
・東門よりご入場(西門及び太鼓橋は車両進入禁止)
*無料駐車場:最大100台収容
【ご祭神・ご由緒】「天の岩戸」神話ゆかりの神社
【ご祭神】
<日前神宮>
主祭神:日前大神
天の岩戸の神話で「八咫鏡」に先駆けて作られた鏡「日像鏡」をご神体とする神。
諸説あるようですが、「日前大神」が「天照大御神」の別名で同一神とされています。
相殿神:思兼命
天照大神の岩戸隠れの際、神々に知恵を授けられ解決された神。
おかげで世の中は再び太陽の恵みを受けられるようになったそうです。
また、八咫鏡を作らせたとされます。
「天照大御神」の信頼が厚く、何か事があると必ず知恵の神「思兼命」に相談したとされます。
相殿神:石凝姥命
天の岩戸隠れで使用した八咫鏡を造ったとされる神。
<國懸神宮>
主祭神:國懸大神
こちらも八咫鏡に先駆けて作られた「日矛鏡」をご神体とする神とされますが、謎の部分も多く、元々は紀伊国の土地の神だったという説もあるそうです。
相殿神:玉祖命
岩戸隠れの際に、三種の神器の一つである「八尺瓊勾玉」を造った神様として知られています。
相殿神:明立天御影命
製鉄・鍛冶の神「天目一箇神」の別称。
さらに、「石凝姥命」とともに八咫鏡を造った「天津麻羅」とも同一神とされます。
相殿神:鈿女命
「天鈿女命」「天宇受賣命」とも表記されます。
芸能の女神であり、日本最古の踊り子と言われています。
岩戸隠れの際には、半裸で舞って神々を笑わせ、それによって「天照大御神」を誘い出したとされる女神です。
■ご神体「日像鏡」と「日矛鏡」
「天の岩戸」神話で「天照大御神」を映した鏡は、代々の天皇家が継承してゆく「三種の神器」のひとつ「八咫鏡」です。
それに先駆けて造られた「日像鏡」と「日矛鏡」のご神体の鏡は、いずれも伊勢神宮の神宝である八咫鏡と同等のものとされます。
八咫鏡は伊勢神宮で「天照大御神」のご神体とされていることから、「日前神宮・國懸神宮」の神は重要な神とされ、準皇祖神(皇室の祖とされる神)の扱いをうけていたそうです。
【ご由緒】
社伝によると、神武天皇2年(約2600年前)、紀氏(古代の豪族)の祖神である「天道根命」が、日像鏡・日矛鏡をご神体として、紀伊國名草郡毛見郷の地におまつりしたのが始まりとされます。
崇神天皇51年に名草郡濱宮に遷され、垂仁天皇16年(紀元前14年)には、現在地に遷座されたと伝わります。
その後、両神宮のご神体が三種の神器に次ぐ宝鏡とされたために、朝廷からの崇敬も篤く、伊勢の神宮に次いで神階をおくらない別格の社として尊崇されました。
神位を授けられなかったのは、伊勢神宮の他に日前・國懸両神宮のみということです。
また、延喜式神名帳(当時「官社」に指定されていた全国の神社一覧)では名神大社に列し、古くより紀伊國一之宮として一般の人々からも崇敬をあつめ、両神宮を「日前宮」と総称して呼ばれています。
戦国時代、1585年に豊臣秀吉に攻め込まれ、境内が荒廃し社領が没収されましたが、江戸時代に紀州藩初代藩主「徳川頼宣」により社殿が再興されました。
さらに大正8年の国費による境内建物の改善工事が行われ、大正15年の完成をもって旧観は一新されて、現在の姿となっているそうです。
【社務所受付時間】
午前8:00~午後5:00
*新型コロナウイルスの影響で流動的なため、事前に電話で確認することをおすすめします。
御朱印
・社務所にて:午前8:00~午後5:00
・御朱印代:¥300
*現在は、書置きの御朱印の頒布のみ
【主な祭礼】
例大祭
9月26日
毎年9月26日に行われる例大祭は、約2600年受け継がれている伝統のお祭り。
両神宮のご祭神ゆかりの日をお祝いして、日々のご神徳に感謝するとともに、人々の平和、国家安泰、五穀豊穣を祈念します。
まとめ
「日前神宮・國懸神宮」は、境内に2つの神宮を持つ全国的にも珍しい神社。
古代日本において、伊勢神宮と同等の神格を有する特別な神宮とされ、三種の神器のひとつ「八咫の鏡」に先立って造られたとされる鏡がご神体とされます。
また、ご祭神には、「天照大御神」をはじめ、日本神話でも有名な「天の岩戸」神話にちなんだ神様たちがまつられ、良縁を結び、結婚の徳を授かり、家内安全のご利益が授かれることで知られています。
2600年もの間守られたきたご神気が満ちる鎮守の杜で、神話の時代の息づかいを感じてみてはいかがでしょうか。