長崎県対馬は日本海に浮かぶ縦長の島。
「国境の島」と呼ばれ、実は朝鮮半島まで約50kmしか離れていません。
そんな九州と朝鮮半島の間に位置する対馬は、古代において外交と国防の最前線の島でした。
「海神神社」は、対馬の朝鮮海峡が一望できる伊豆山中腹に鎮座し、八幡信仰発祥の地ともいわれています。
ご祭神には海の神「豊玉姫命」をまつり、海上安全・豊漁・安産・家内安全・子孫繁栄・縁結びなどのご利益をさずけていただけるそうです。
また、社殿のある伊豆山は、神様の宿る場所として斧を入れたことがない原生林が残っていて「野鳥の森」として重要文化財に指定されています。
【ご利益】海上安全・豊漁・安産・家内安全・子孫繁栄・縁結びなど
主祭神に海の神「豊玉姫命」をまつりますが、「天照大神」の子「彦火火出見命(山幸彦)」と結婚して出産することから、海上安全・豊漁・安産・家内安全・子孫繁栄・縁結びなどのご利益があるとされます。
【所在地・アクセス】対馬の中央部に位置する伊豆山中腹に鎮座
<所在地・電話番号>
〒817-1303 長崎県対馬市峰町木坂247
TEL:0920-83-0137
<アクセス>
■飛行機をご利用の方:
・福岡空港から片道約30~40分(1日5往復)
・長崎空港から片道約35分(1日4~5往復)
・対馬空港から車で約1時間
*無料駐車場:約30台収容
■海路をご利用の方:
・博多港から厳原港
ジェットフォイル(高速艇)片道2時間15分、フェリーでは片道4時間40分。
それぞれ1日2往復
・または、厳原フェリーターミナルから車で約1時間20分
【ご祭神・ご由緒】八幡信仰発祥の地ともされる
【ご祭神】
〈海神〉
・「豊玉姫命」
・「鵜葺屋葺不合命」(豊玉姫命の御子)」
〈八幡神〉
・「神功皇后」
・「応神天皇(神功皇后の御子)」
「海神」「八幡神」それぞれ2組の母子神がまつられ、他に「彦火火出見命」、「宗像神」、「道主貴神」が配祀されています。
対馬には、太陽によってはらんだ子供を天神としてまつる「天道信仰」があり、「母子信仰」が基盤にあるそうです。
そこに、「八幡信仰」が習合(異なる宗教の神々や教義などのそれぞれのよいところをとって一つに合わせること)していたとされ、地理的特性や歴史的背景から、さまざまな信仰が複雑に絡み合っているようです。
<主祭神:豊玉姫命>
別称:「豊玉毘売」など複数の表記があります。
「神武天皇」(初代天皇)の祖母。
日本神話に海の神「綿津見神」の娘として登場し、「彦火火出見命(山幸彦)」と結婚し、「鵜葺屋葺不合命」を出産します。
<配祀:鵜葺屋葺不合命>
「彦火火出見命(山幸彦)」と「豊玉姫命」の御子。
「神武天皇」(初代天皇)の父、農業と漁業の守護神です。
<配祀:神功皇后>
「古事記」「日本書紀」に伝えられる「仲哀天皇」の皇后。
「仲哀天皇」の没後、皇子を身ごもりながら兵を率いて朝鮮半島に遠征し、帰国後に「応神天皇」を出産したとされます。
安産・子育ての女神として篤く信仰されています。
<配祀:応神天皇>
「古事記」「日本書紀」において第15代に数えられる大和朝廷の天皇。
「神功皇后」の御子。
4世紀末から5世紀初頭に実在した可能性が高いとされます。
「仲哀天皇」が没したとき「神功皇后」の胎中にあったため胎中天皇ともいわれます。
【ご由緒】
創祀年代は不詳です。
「神功皇后」が朝鮮半島への遠征の際に海神をまつり、そのご加護によって大勝することができたため、凱旋(戦いに勝って帰ること)にあたって旗八流(八本の旗)を納めたのが由来と伝わります。
旗は当初「上県郡峰町」に納められましたが、後に現在地の「木板山(伊豆山)」に移して社を造営したとされます。
伊豆山の「伊豆」は「厳か」の意味があり、不浄を許さない聖域を表すとされますが、その地名に由来し、かつて「海神神社」は、「木坂八幡宮」と称していました。
また、このことから八幡信仰発祥の地(神功皇后は八幡神)ともいわれているそうです。
中世以降は、対馬国の上県郡に位置するがゆえに、下県郡にある「下津八幡宮」・「厳原八幡宮」に対して「上津八幡宮」と称されていました。
そして、「延喜式神名帳(全国の神社一覧)」に記載されている「対馬国上県郡和多都美神社」に比定(他の類似の物と比較して、その性質を判断すること)されています。
他にも対馬国一之宮の論社(どれが「延喜式」に記されている神社か決定し難いもの)には、「厳原八幡宮」があります。
しかし、「厳原八幡宮」は「海神神社」を遷してまつり創建されたともされ、現在一之宮を称していないため、「海神神社」が対馬国一之宮だと考えられているそうです。
このように江戸時代までご祭神は八幡神でした。
その後、明治3年に社名を「和多都美神社」に改称。
翌年には国幣中社に列格する際に、ご祭神を八幡神から「豊玉姫命」に改め、社名も再度改称して「海神神社」とし現在に至っています。
<境内にある「峰町ふるさと宝物館」>
・弥生時代の「広型銅鉾」
・朝鮮半島新羅統一時代(8世紀)に新羅で鋳造された国の指定重要文化財「銅造如来立像」
・11世紀から14世紀にわたる中国、高麗で鋳造された「銅鏡」
・15世紀に日本で製作された神事や祭事に使われたという県の指定有形文化財「木造仮面」
などが収蔵されています。
※拝観には事前連絡が必要です。(拝観料:¥200)
【社務所受付時間】
社務所は基本的には常駐されていません。
【御朱印】
・御朱印代:¥500
不在の場合は、電話で連絡して来ていただくことになるそうです。
当日の連絡では難しいこともあるそうですから、前日までに連絡されると安心だと思います。
TEL:090-50828-6892(宮司さん)
【主な祭礼】
例大祭
毎年 旧8月5日
長崎県対馬には、中世日本の古い形を継承する神楽舞「命婦の舞」という巫女舞があります。
平成8年に国選択無形民俗文化財に指定され、毎年、旧暦8月5日に奉納されています。
舞は、囃子太鼓を打ちながら10分にも及ぶ祝詞をとなえます。
祝詞をとなえた後、右手に神楽鈴を持って古風な神楽歌をうたいながら舞いますが、これは神楽の原初的姿のひとつである巫女舞を考える上で、貴重な伝承とされているそうです。
まとめ
「海神神社」は、古代において朝鮮半島に対する外交と国防の最前線の島とされた長崎県対馬に鎮座しています。
起源は、「神功皇后」が、朝鮮の新羅を鎮めた証を納めたことにさかのぼり、八幡信仰発祥の地といわれています。
現在は、主祭神に海神「豊玉姫命」をまつり、海上安全・豊漁・安産・家内安全・子孫繁栄・縁結びなどのご利益があるとされます。
社殿のある伊豆山は原生林が残り、境内を含めた周辺の「野鳥の森」では森林浴したり、野鳥を探しながら遊歩道を散策することもできます。
古代からの神聖な空気や対馬の自然に触れつつ、歴史ある「海神神社」にお参りしてはいかがでしょうか。