伊太祁曽神社、鳥居©仰木一弘 wih LeicaQ
「伊太祁曽神社」は、日本に樹木を植えて回ったとされている木の神「五十猛命」をおまつりする神社。
和歌山県は明治以前は紀伊国と呼ばれていましたが、こちらの神が住む国として「木の国」と呼ばれ、転じて「紀伊国」となったとされています。
紀伊国一之宮であり、木の神様として有名ですが、災難に遭われた「大国主神」の生命を救ったという神話から、いのち神、厄難除けの神としての信仰も篤く、病気平癒祈願、厄除け祈願にも多くの参拝客が訪れます。
境内にはご神木の穴をくぐる「木の俣くぐり」があり、厄難除けのご利益があることから人気のスポットに。
今でも、4月第1日曜日に木に感謝する「木祭り」が行われ賑わいを見せているそうです。
【ご利益】林材業の繁栄・交通安全・病気平癒・厄除けのご利益があるとされる
木の神様「五十猛命」をまつることから、山林業・林材業の繁栄、安全祈願にご利益があるとされ、全国の建築や木材関係者が多く参拝する神社として有名です。
木は船を作る材料になることから、漁師の人々の信仰も篤く、船の神様・航海安全の神様、転じて交通安全の神様としても崇められています。
さらに、 古事記 に災難に遭われた「大国主神」の生命を救った話が記されていることから 、いのち神、厄難除けの神とされ、病気平癒、厄除けのご利益があるそうです。
厄難除けのご利益がある「木の俣くぐり」体験を!
割拝殿(建物の中央に通路が設けられた拝殿)には、「木の俣くぐり」を体験できる有名なスポットがあります。
木の俣くぐりの木は、社務所前に樹齢1000年ほどのご神木としてそびえていた杉の木ですが、落雷で燃え残った一部をおまつりしています。
ご神木には大きな穴があり、ここをくぐり抜けることで厄難除けのご利益があるとか。
神代の頃、「大国主神」が命をねらわれた時に、「大屋毘古神(ご祭神五十猛神の別名)」の助言により木の俣をくぐり難を逃れたという神話にちなみ信仰が生まれたそうです。
大人でも通ることができる大きさですから、ぜひ「大国主神」がくぐったとされる「木の俣くぐり」を体験してみてはいかがでしょうか。
御井社と「いのちの水」
「御井社」には水の神、井戸の神として知られる「彌都波能売神」がまつられています。
社の前の井戸からは「いのちの水」と呼ばれる水が湧いています。
こちらのご神水を飲むと、活力を得ることができるとされ、病気を患っている方なども治癒の力が働くと伝わることから、遠方から汲みに訪れる方が多いそうです。
「お猿石」は霊験あらたかと伝わる霊石
拝殿横には、「お猿石」という霊石があり、猿の頭に見えるということから名付けられたそうです。
霊験(神仏などが示す不可思議な力の現れ、ご利益 ) が著しく、古くより地元の人は参拝する前に、この石に手を当てて心を落ち着かせていたとされています。
現在は、「お猿石」を撫でると、首より上の病に効果があるといわれているそうです。
五十猛命の荒御霊をまつる「氣生神社」
ご本殿におまつりされているのが「五十猛命」の和御魂であり、摂社「氣生神社」には、荒御霊をおまつりしています。
荒御霊とは、神の荒々しい側面のことで、その荒々しさから新しいものを生み出す非常に強いパワーを持つとされ、願いが叶いやすいといわれます。
それに対して和御魂は、神の優しく平和的な側面で、荒魂と対極にあるもの。
古来、和御魂というのは神々の通常のお姿であり、神様のお力を発揮される際には、荒御魂のご神格になると考えられているようです。
そして、ご神威が強くなると和御魂と荒御魂は別々にまつられるようになるとされています。
伊勢の神宮では、「下宮」・「内宮」とも御正宮にそれぞれのご祭神の和御魂をまつり、別宮の「多賀宮」・「荒祭宮」に荒御魂をまつって、個人的な願い事はこちらの別宮にて祈る作法となっています。
お願いごとは、「氣生神社」へ参拝された方が、叶いやすいかもしれませんね。
【所在地・アクセス】電車でのアクセスが便利
<所在地・電話番号>
住所:〒640-0361 和歌山県和歌山市伊太祈曽558
TEL:073-478-0006
<アクセス>
■電車をご利用の方:
・JR「和歌山駅」より和歌山電鐵貴志川線(9番線ホーム)にご乗車になり、伊太祈曽駅で下車、駅より徒歩約5分。
*関西空港からアクセスする場合は、和歌山行きのリムジンバスに乗り、JR「和歌山駅」下車、和歌山電鐵貴志川線に乗り換えます。
■車をご利用の方:
・阪和自動車道「和歌山IC」より約20分
*無料駐車場:30台収容
【ご祭神・ご由緒】樹木の種を国中に蒔いた「五十猛命」と妹神をまつる
【ご祭神】
ご本殿は3社が並び、中央のご本殿に主祭神「五十猛命(別名 大屋毘古神)」、左右の脇殿に配神「大屋津比売命」と「都麻津比売命」の妹神がまつられています。
三柱はいずれも「素戔嗚尊」の御子神であり、木の神として信仰される神様です。
日本書紀によりますと、主祭神である「五十猛命」は、父である「素戔嗚尊」と共に、木の種を持って高天原から降り立ちます。
父から樹木の種を託された「五十猛命」は、二人の妹と共に日本全国に種を蒔いて回り、日本は緑豊かな国になったと伝えられています。
国土の緑化を終えたのち、最後に木の国(紀伊国)に降り立ち、木の神として慕われまつられることとなりました。
また、古事記に登場する八十神に追われた「大国主神」を助けたとされる「大屋毘古神」と同一神といわれ、「いのち神」「厄難除けの神」という信仰もあるそうです。
【ご由緒】
始まりについて詳しいことは分かっていないようですが、もともと和歌山市秋月に鎮座する「日前神宮・国懸神宮(通称:日前宮)」の社地にあったと伝わります。
「日前神宮・国懸神宮」の鎮座が垂仁天皇16年(紀元前14年)とされていますから、「伊太祁曽神社」はそれより前に創建されていたということになります。
「伊太祁曽神社」は、現在の社殿より500mほど離れた「亥の森」と呼ばれる所に一度遷されたあとに、和銅6年(713年)に現在の社地へ鎮座されたそうです。
平安時代にまとめられた延喜式神名帳(当時「官社」に指定されていた全国の神社一覧)には名神大社として列せられ、紀伊国一之宮となり朝廷からの篤い崇敬を受けていました。
【社務所受付時間】
午前9:00~午後5:00
*新型コロナウイルスの影響で流動的なため、事前に電話で確認することをおすすめします。
【御朱印】
・社務所にて:午前9:00~午後5:00
・御朱印代:¥300
『厄除け鏡文字絵馬』
「伊太祁曽神社」には、「ピンチをチャンスに変える厄除け鏡文字絵馬」という厄年を逆手にとる絵馬があります。
「厄」の文字を鏡文字に裏返して、負とされるものをプラスの力に変えてしまうものだとか。
厄年の時には、奉納しておけば気にせず一年を過ごせそうですね。
他にも裏面には「氣」の文字が焼印で押されている飾り絵馬があります。
こちらは、「木は氣に通ず」ということから「木の神様」の「氣」をいただくという意味があるとされます。
願い事を書いて奉納しても、お守りとして持ち帰っても良いそうです。
【主な祭礼】
木祭り
4月の第一日曜日
「木祭り」では、日頃から人々に恩恵を与えてくれている木々へ感謝する祭典が行われ、多くの人がお祭りに訪れます。
式典のあとには、チェーンソーカービングの世界チャンピオンの実演奉納が行われますが、迫力満点で一見の価値ありと大変人気のイベントとなっているそうです。
巧みなチェンソーさばきで作られた十二支の丸太の彫刻は、お祓いされた後に神前に供えられます。
茅輪祭
7月30日・31日
茅輪祭は 毎年2日間行われる恒例の行事で、地元では「わくぐり」 の名で親しまれている夏越の大祓いです。
参拝者は、人形に氏名を記入してそれで体を撫で、最後に息を吹きかけて罪や穢れを人形に移します。
その後に、茅の草から作られた大きな輪「茅の輪」をくぐるというもの。
くぐることで罪や穢れを祓うとされ、人形を祭壇に納めて1年間の無病息災を祈願します。
参拝後は頒布された小茅輪を家の玄関に掛けると、1年間家族が災難を逃れると伝わるそうです。
まとめ
「伊太祁曽神社」のご祭神「五十猛命」は、日本中に樹木を植えて回り、最後に紀伊国に鎮まったとされる神様です。
「五十猛命」は「木の神様」として有名であることから、全国の木材関係者のお参りが多い神社。
また、「大国主神」を災いから救ったとされる神話から「いのち神」「厄難除けの神」としての信仰があり、厄除け、病気平癒を祈る多くの人々が参拝されます。
境内には、ご神木の穴をくぐることで厄難から免れるという「木の俣くぐり」や「おさる石」、「いのちの水」など様々なスポットが。
そんな紀伊国一之宮「伊太祁曽神社」へぜひ足を運んでみてくださいね。