貫前神社、楼門©仰木一弘 wih LeicaQ
世界遺産で有名な「富岡製糸場」から車で10分ほど行ったところに、1400年以上の歴史を誇る「一之宮貫前神社」が鎮座しています。
実は、全国的にも珍しい「下り宮」の神社。
こちらの社殿は、一般的な参道の石段を上がったところではなく、下がったところにあります。
そして、「徳川家光」によって建てられた社殿は、国重要文化財に指定され、漆塗りの彩色の造りが見事です。
ご祭神には、武神「経津主神」と養蚕の神とされる「姫大神」をまつり、地域全体の守護と縁結びで知られています。
また、武勇の神に由来する、勝ちカエル信仰が有名です。
【ご利益】刀の威力を神格化した武神の御神徳から厄除け・災難除け・勝負運
邪悪なものを打ち破る霊力を持つ武神をまつることから、災難除け・厄除け・勝負運にご利益があるとされています。
また、養蚕と機織りの神とされる女神がまつられ、糸をつむぐことがご縁を結ぶということから、縁結びのご利益もさずかることができるそうです。
さらに、男女1柱ずつのご祭神がまつられ、地域のご縁、男女のご縁を結ぶ土地神様として古くから信仰されてきました。
樹齢1200年とされるご神木「藤太杉」
「一之宮貫前神社」では、歴史ある古木が立ち並びますが、境内にある「イチョウ」と「スダジイ」の木は樹齢約1000年。
そして、ご本殿の裏にそびえるご神木「藤太杉」は、なんと樹齢約1200年にもなるそうです。
こちらは「平将門」討伐のために出征した「藤原秀郷(俵藤太)」が戦勝祈願で植えたもので、年齢と同じ36本の杉を植えたうちの1本とされることに、杉の名前の由来があるそうです。
必勝祈願のご利益があるとされているご神木のパワーを、ぜひ感じてみてくださいね。
蛙の木からうまれた「カエル」信仰
総門の右手に蛙の木と呼ばれるタブノキがあります。
蛙の木と呼ばれるようになったのは、太平洋戦争末期。
この木に生えた「さるのこしかけ」というキノコが蛙の形に似ていたことによるそうです。
それをきっかけに、ご祭神が武神であることからも戦時中は、戦争に勝って無事に帰る=カエルという意味も込められ「勝ち蛙」として信仰を集めたと伝わります。
現在は、「無事にかえる」として交通安全のご利益をさずかれる人気のお守りになりました。
そして、お賽銭箱の横には、お役目を終えて返納された黄金色のかえるが置かれています。
パワースポットとされる「月読神社」
ご本殿の後にぜひ参拝していただきたいのが、「抜鉾若御子神社」と「月読神社」です。
「抜鉾若御子神社」は、ご祭神の御子神をまつる摂社であり、「月読神社」は
「一之宮貫前神社」のパワースポットとされています。
「月読神社」の社殿はかつて本社の拝殿として使用されていたもので、「月読命」をおまつりします。
月の神様で、ツキをもたらし諸願成就のご利益があるとされています。
【所在地・アクセス】富岡製糸場から車で10分の場所
<所在地・電話番号>
〒370-2452 群馬県富岡市一ノ宮1535
TEL:0274-62-2009
<アクセス>
■電車をご利用の方:
・JR高崎線、または上越新幹線「高崎駅」から上信電鉄に乗車
「上州一ノ宮駅」下車、徒歩約15分
*上信電鉄では周辺観光のための無料貸し自転車があります。
ちなみに上州一ノ宮駅から「貫前神社」まで約5分です。
■車をご利用の方:
・上信越自動車道「富岡IC」または「下仁田IC」から約20分。
*無料駐車場:正面石段の下の広場、石段を登った総門の所に数台。
総門左手に市営の駐車場あり。
【ご祭神・ご由緒】古くから信仰されてきた土地神様をまつる
【ご祭神】
「経津主神」と「姫大神」の2柱をまつります。
<経津主神>
日本神話の国譲りにおいて重要な役割をする神様。
葦原中国(日本の異称)平定に功績があったとされています。
神話にも登場する剣「布都御魂」を神格化したとする説から、刀剣の神とされ、勝利をつかさどる武神です。
また物部氏の氏神でもあり、 「香取神宮」のご祭神でもあります。
<姫大神>
別称:比売神、比咩神などと複数の表記があります。
特定の神の名前ではなく、主祭神と関係の深い女神を指すそうです。
また、まつられた由緒はわかっていませんが、養蚕と機織りの神とされています。
もしかすると、富岡製糸場の発展にもご利益が関係しているかもしれませんね。
【ご由緒】
社伝によると、有力な豪族であった「物部氏」が、氏神「経津主神」をまつったことに始まるとされています。
その後、平安時代にまとめられた「延喜式神名帳(官社に指定されていた全国の神社一覧)」にも名神大社として記載され、上野国(現在の群馬県)一之宮として崇敬をあつめてきました。
そして、鎌倉時代より「源頼義・義家」父子をはじめ武家の崇敬に篤く、室町時代には上杉氏、武田氏などの保護を受けるようになったとされます。
江戸時代に入ると徳川家の保護を受け、江戸幕府の3代将軍「家光」公や5代「綱吉」公の時代に、社殿の造営や大規模な改修が行われ現在にいたります。
「下り宮」と二階建ての「本殿」
境内は、正面の参道を上がり、大鳥居・総門をくぐってからまた下った場所に社殿が配置されています。
「下り宮」と呼ばれ、宮崎県の「鵜戸神宮」、熊本県の「草部吉見神社」とともに、日本三大下り宮の一社です。
下りの石段を進むと、「一之宮貫前神社」の象徴でもある桜門が見えてきますが、ご本殿や拝殿、楼門は、「徳川家光」によって1635年の設立とされます。
その後の「徳川綱吉」による大規模な改修で、現在の様な漆塗りの華やかな造りとなり、本殿、拝殿、楼門は国の指定重要文化財となっています。
平成21年には「平成の大改修」が行われ、また新しく鮮やかな漆が塗られたそうです。
さらに、「下り宮」と同じく珍しいとされるのが、ご本殿の二層式構造。
外観は一階建てのように見えますが、実は内部は二階建てという独特の「貫前造り」と呼ばれているものです。
この二階部分に神様がまつられていますが、なぜこのように建てられたのかは謎とされています。
また、雷神様の出入り口とされる「雷神の小窓」には、雷神様が描かれているので見逃さずご覧になってくださいね。
【社務所受付時間】
午前8:00ー午後5:00
*新型コロナウイルスの影響で流動的なため、事前に電話で確認することをおすすめします。
【御朱印】
・社務所にて:午前9:00ー午後5:00
・御朱印代:¥500
・オリジナル御朱印帳:¥1,500(御朱印代を含む)
【主な祭礼】
「一之宮貫前神社」では12年ごとの式年遷宮(新殿を造営して旧殿の神体を移すこと)をはじめ、古くから伝わる儀式が数多く残されています。
その中でも大変珍しいとされる「鹿占習俗」(国選択・県指定無形民俗文化財)、「機織神事」、「御鎮神事」などが行われることでも有名です。
「鹿占習俗」とは、シカの肩の骨を焼いた錐でつらぬき、そのヒビ割れの具合によって吉凶を占うとされます。
ちなみにうまくつらぬけたら大吉、錐が骨に刺さらない場合は大凶だとか。
「機織神事」は、若い女性が神衣を機で折り、ご祭神「姫大神」に奉納します。
そして、特に有名なのが「御鎮神事」。
神職の方が、社務所で草履をはき、提灯一つで、参道を通り御鎮塚に供物を納めて帰ってくるというもの。
神事中は絶対に口をきいてはいけないとされ、口をきけば死ぬと伝わるそうです。
また、神職を見たら悪いことがあるといわれているため、近くの民家は明かりを消して辺りは真っ暗になると言います。
少し怖く感じますが、この神事で神職の方がはいた草履は、最高の魔除けになるそうです。
まとめ
「一之宮貫前神社」は、世界遺産「富岡製糸場」の近くにたたずむ1400年以上の歴史を持つ上野国一之宮。
社殿に行くには石段を下るという珍しい構造で、「日本三大下り宮」の一社にあげられています。
その社殿は「徳川家光公・綱吉公」によって造営、改修されたもので、総漆塗りの華麗な装飾は一見の価値があります。
また境内にそびえる樹齢1000年のスダジイ、1200年の「藤太杉」、蛙の木と呼ばれるタブノキなども見どころ。
古くから土地神様として信仰され、厄除けや縁結びなどのご利益があるそうです。
本殿をお参りしたあとは、パワースポットとされる「月読神社」でも祈願されることをおすすめします!