洲崎神社、一の鳥居 ©仰木一弘 wih LeicaQ
たくさんの神社がある中、「一之宮」はどのようなものかご存知でしょうか?
一般的には、一番格式が高い神社のことを指し各国にひとつとされます。
ところが、安房国(千葉県南部)では「洲崎神社」と「安房神社」の2つの神社がともに館山市に鎮座しています。
しかも、それぞれのご祭神がご夫婦。「洲崎神社」には、后神がまつられていますが、結婚・恋愛や安産、夫婦円満のご利益があるそうです。
また、戦に敗れて安房へ逃れた「源頼朝」が、再起を願ってお参りしたことにちなんで、再び立ち上がる力をさずかることができるといわれています。
社殿が東京湾を見下ろす御手洗山の中腹にあることから、太平洋が一望できるほか、「浜鳥居」の中央には富士山が見え、時期により太陽が鳥居中央に沈む絶景に出会えます。
【ご利益】「再起」のご利益があるとして有名
主祭神に航海安全の女神「天比理乃咩命」をまつり、古くから漁師や船乗りの海洋関係の人々から信仰を集めていました。
芸道や結婚・恋愛、安産にご利益があるとされています。
また、天下統一を果たし鎌倉幕府を開いた「源頼朝」ですが、実は伊豆で「平清盛」との戦いに敗れて安房の地へ逃れた際に、「洲崎神社」へ戦勝祈願したと伝わります。
その後、地元で有力な豪族などの協力を得て、平家討伐を成功させ見事に願いを叶えたことから、「再起」のご利益があるとして有名です。
急勾配の「厄祓い板」
拝殿まで148段の長く、傾斜30度の石段。
坂の名は、傾斜が急な石段を神を深く敬う気持ちでのぼり、お参りすることで厄落としができるとして名付けられたそうです。
階段の中断と最上段の両脇には2対のコンクリート柱がありますが、こちらは、神輿が急勾配の石段を上り下りする時に、神輿を支える危険防止のための支柱になります。
鳥居の中に富士山が見える絶景スポット
拝殿から海側へ移動すると「富士見鳥居」があります。
東京湾の海を一望することができ、天気のいい日には鳥居の中に富士山がすっぽり入って見える場所です。
また、県道257号線(房総フラワーライン)を渡ったところに、 「浜鳥居(一の鳥居)」がありますが、こちらも鳥居中央に富士山が見え、時期により夕日が鳥居中央に沈む姿を見ることができる絶景スポットになっています。
毎年5月、7月には、気象条件が良ければダイヤモンド富士が見られるそうです。
竜宮から奉納された「御神石」
「浜鳥居」の近くにまつられた、長さ約2.5mの細長い石「御神石」は、パワースポットとされています。
こちらは竜宮から奉納された2つの石の一つとされ、もう一つは対岸の神奈川県三浦半島の「安房口神社」にあります。
「安房口神社」の石は、先端に丸いくぼみがあるため 阿形、「洲崎神社」の石は、裂け目の様子から 吽形とされ、合わせると「阿吽」となり、狛犬のように東京湾の海上の安全を守っているそうです。
そのため、ふたつの石をお参りすると事故に遭わないようになるといわれています。
【所在地・アクセス】ご神域である御手洗山の中腹に鎮座
ご神体として古代信仰の聖域となっていた御手洗山は、斧を入れたことがない神域とされ、千葉県の天然記念物「洲崎神社自然林」に指定されています。
<所在地・電話番号>
〒294-0316 千葉県館山市洲崎1344
TEL:0470-29-0713
0470-33-2800(宮司ご自宅)
<アクセス>
■車をご利用の方:
富津館山道「富浦IC」から車で25分
*無料駐車場:5台程度
■電車をご利用の方:
・東京・千葉方面からJR内房線「館山駅」で下車
・JRバスの洲崎線に乗車して「洲崎神社前」で下車(およそ30分)
・徒歩で約5分
*JRバスは本数が限られているので、乗り継ぎの時間を確認されることをおすすめします。
【ご祭神・ご由緒】安房を開拓した「天富命」が祖母の「天比理乃咩命」をまつられた
【ご祭神】
ご祭神には主祭神である「天比理乃咩命」、相殿神にはその夫神など家族神がまつられています。
■主祭神:天比理乃咩命
「洲ノ神」という別名もある航海安全の女神。
安房を開拓したと伝わる忌部一族の祖神「天太玉命」の后神とされます。
また「天岩戸の神話」に登場する神様。
「須佐之男命」の乱暴に心を痛めて天岩戸に隠れた「天照大御神」を引き出すため、岩戸の前で踊ったと伝わります。
■相殿神:天太玉命
別称:布刀玉命
忌部一族の祖神。「天比理乃咩命」の夫神。
占い・神事の神、日本の全ての産業創始の神様です。
「天岩戸の神話」に登場し、岩戸の前で儀式を執り行って「天照大御神」を誘いだした神の一人とされます。
■相殿神:天富命
「天比理刀咩命」と「天太玉命」の孫神。
「神武天皇」の命を受けて肥沃な土地を求めて四国の阿波国へ上陸し、開拓したとされます。
さらに肥沃な土地を目指して房総の地へ降り立ち開拓した神様です。
【ご由緒】
「洲崎神社」に伝わる「洲崎大明神由緒旧記」によると、「神武天皇」が治めていた頃、「天富命」が「天比理乃咩命」の鏡をご神体として御手洗山へまつられたことが始まりとされています。
平安時代のにまとめられた「延喜式神名帳(官社に指定されていた全国の神社一覧)」に記載され、元の名を「洲ノ神」と称されていました。
鎌倉時代には、平家との戦に敗れ安房へ逃れた「源頼朝」が、源氏の再興を祈願し土地を寄進しています。
また、室町時代には江戸城を築いた「太田道灌」が「洲崎神社」の御分霊をうつして城の鎮守(現在の神田明神)とするなど、広い信仰がありました。
それ以降も、関東武士からの崇敬が篤く、江戸時代には、房総を視察した「松平定信」が、「安房国一宮洲崎大明神」の扁額(門・鳥居などの高い位置に掲示される額)を奉納したとされ、それが安房国一宮であったという由来となっています。
【社務所受付時間】
社務所はありますが、神職が他の神社と兼務されているため常駐していません。
【御朱印】
・御朱印代:¥300
御朱印は半紙に書置きしたものが、随身門のところに置かれています。
当分の間は、ご自宅での対応ができなくなったため、書置きのみとなるそうです。
【主な祭礼】
例祭
毎年8月21日
境内では、千葉県の無形民俗文化財に指定されている「みのこ踊り」が奉納されます。
木に白い幣束と鏡をつけた物を持って踊る「弥勒踊り」と、扇を持って踊る「鹿島踊り」の2種類からなり、豊作豊漁、悪霊退散を祈願して行われます。
その後に「厄払い坂」とよばれる急角度の階段を神輿を上下に動かしながら降りる神事「お浜出」が行われ、海上安全と大漁祈願をします。
148段もの階段を降りてくる様子は、とても迫力があり必見です。
まとめ
「洲崎神社」は房総半島の一番西端にあり、148段の石段を上った御手洗山の中腹にただずむ安房国一之宮。
この急な階段を登ること自体が厄払いになるとされています。
そして、太平洋を一望できるほか、「浜鳥居」、「富士見鳥居」からは富士山の絶景を眺めることができます。
また、航海安全・結婚・恋愛・安産にのご利益があるとして信仰を集め、戦に敗れ安房へ逃れた「源頼朝」が戦勝祈願し、みごとに再起したという故事が伝わります。
一度失敗してもリベンジしたいとき、新しいチャレンジをしたい時など、ぜひ「洲崎神社」へ参拝してみてはいかがでしょうか。