日本には、約8万社の神社、7万7千社ものお寺があるそうです。
初詣やお祭り、観光スポットとして有名な寺社も多く、また普段からお参りに訪れる方も多いのではないでしょうか。
そんな日本文化の象徴ともいえる神社とお寺の違いをご存知ですか?
何となく知っているようで、うまく説明するのは意外と難しいかもしれませんね。
今回は、神社とお寺の具体的な違いについてわかりやすく解説していきます。
今まで気にすることなく訪れていた方も、それぞれの特徴や違いを知ることで、参拝がより味わい深いものになること間違いなしですよ。
神社とお寺の定義
簡単にいうと、神社とお寺は宗教が異なる施設です。
かつては、神社とお寺が明確に区別されない時代もありましたが、明治時代の神仏分離令を経て、はっきりと分けられるようになりました。
それでは、くわしく神社とお寺の定義についてみていきましょう。
神社とはどんなところ?
神社は、日本古来の宗教「神道」の施設。
神道は、自然崇拝に基づく宗教ですが、自然だけでなく物や人、土地といったあらゆる物には神が宿るとして、「八百万の神」をまつるのが特徴です。
たくさんの神様がいらっしゃいますが、最高位とされるのは、太陽神の「天照大神」といわれています。
神社は、そんな神道に基づいて、神の住む神聖な場所や神聖な儀式を行っていた場所に建てられたのが起源とか。
それぞれの神社におまつりされている神様は、「ご祭神」とも呼ばれますが、一つの神社に複数の神様がまつられることも。
また、神が宿るとされる鏡や剣、玉などを「ご神体」という形で安置したり、山や岩、滝など自然そのものを「ご神体」としている神社もあります。
神社で神様に奉仕している方を、神職または「神主」と呼びますが、その中で責任者となるのが「宮司」です。
神道には、教典もなければ厳格な教えもないため説教などは行わず、神の言葉を伝えたり、目的をに合わせて「祝詞」を唱えます。
神社の名前は「神社」以外にも規模や格式の違いによって分けられていて、「神宮」「宮」「大神宮」「大社」などが存在し、最高位は伊勢神宮、明治神宮などの「神宮」とされています。
お寺とはどんな所?
お寺は、古代インドで生まれた釈迦(ブッダ)を開祖とする宗教である「仏教」の施設。
仏教は、釈迦の教えを記した経典(お経)をもとにして、悟りを開いた「仏」を信仰の対象とし、その教えを僧侶や信者が修行して、苦しみの輪廻転生から解脱することを目指す宗教です。
そんな仏教を信仰する僧侶が住み、教えを学んだり、修行をしたりする場所がお寺。
また、「寺」だけでなく「院・庵・大師」などの名前がついている場合もあります。
そこには、仏法に従えば国を護り鎮めることができるという考えもあり、祈りの場として整備が進んだようです。
お寺では、釈迦如来、大日如来、薬師如来、聖観世音菩薩などの仏様がまつられいて、その寺で最も重要とされる信仰の対象を「本尊」と呼びます。
安置されている仏の姿を形にした「仏像」に向かって手を合わせ拝みます。
中には、開帳以外の時は公開されない「秘仏」も存在し、著名な寺院の本尊で秘仏とされているものが多いそうです。
お寺で仏様に奉仕するのは「僧侶」、一般的な言葉では「お坊さん」ですが、長となる方は、「住職」と呼ばれています。
このように神社では神道、お寺では仏教が本来の信仰対象ですが、この二つが融合して「神仏習合」という一体化された信仰が長い間続きました。
現在のように神社とお寺が区別されるようになった今でも、 神社とお寺が共存していた頃の名残が残っていて、その一つが、神社に付属して建てられたお寺の「神宮寺」です。
神社とお寺の参拝方法の違い
実は、神社とお寺で参拝方法が異なることをご存知でしたか?
ここでは、神社とお寺の正式な参拝方法を解説していきます。
神社の参拝方法
まず神域と俗界を分けて建つ「鳥居」の前で一礼をし、参道を歩いて拝殿へと向かいます。
参道の中央は神様が通る道とされるので、左右どちらかの端を歩くのが基本です。
お参りの前に、手水舎で手と口を清めましょう。
作法として、まず右手で柄杓を持ち、最初に左手を洗い、次に柄杓を持ち換えて右手を洗います。
次に左の手のひらに水を受け、口に含んですすぎましょう。
最後に、柄杓を立て、流れる水で使用した柄杓を清めます。
この作法は神社もお寺も共通です。
拝殿の前に立ったらお賽銭を入れて、鈴を鳴らします。
その後の礼拝は「二拝二拍手一拝」が基本。
深いお辞儀を2回、手を2回叩き、そのまま合掌して願い事を唱えます。
最後に一礼して拝殿から離れましょう。
神様には自分の名前と住所を述べ感謝を伝えてから、心を込めて参拝することが大切です。
参拝後に鳥居を出る際は、ご本殿に向かって一礼しましょう。
お寺の参拝方法
まず、悟りの領域への入口に建つ「山門」の前で一礼し、参道へ進みます。
お寺の場合は参道の真ん中を歩いても構いませんが、門の敷居を踏まないよう気をつけましょう。
その後、神社と同じように手水舎で手と口を清めたら、本堂へと向かいます。
途中に線香を供える常香炉がある場合は、お線香をお供えし煙を浴びて心身を清めましょう。
香炉の煙を身体の悪いところに浴びると、良くなるといわれているそうです。
本堂では本尊に一礼し、お賽銭を入れて、鰐口があれば鳴らします。
礼拝は神社と異なり、手は叩かないのがポイント。
静かに合掌をして、心の中でお祈りをします。
お祈りが終わったら一礼して本堂を去りましょう。
なお、焼香台があれば、焼香を行いますが、宗派によって回数が違いますから、分からない場合は1回だけにしてもかまいません。
参拝後に、山門を出る際にも本堂に向かって一礼しましょう。
神社とお寺の両方に参拝していいの?
複数の神社やお寺へお参りに行っても大丈夫なのか?また、神社とお寺をはしごすると失礼にあたるのかと、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
基本的に、神社とお寺の両方を参拝することに問題はないそうです。
そんなことで神様も仏様も、失礼だと思うことはなく、怒ったりしないとか。
神社には複数の神様が、お寺でもいろいろな仏様がおまつりされていることも、珍しくありません。
さらに、神様と仏様も、明治時代のはじめまでは何百年もの間、一緒におまつりされていましたから(神仏習合)、気にする必要はないということ。
ただし、神様や仏様への、感謝の気持ちを忘れずにお参りしたいですね。
また、まつられている神様や仏様、ご利益などについてある程度調べていくと、
より良いご縁が結ばれるのではないでしょうか。
神社とお寺の願いの違い
神社への参拝は、現世の幸福を願い、穢れを清めるためのお祓い方法の一つとされています。
今までの穢れを清めて、神様に心機一転の決意表明をするという意味合いがあるため、自分に都合のいい願い事をするのは、本来の目的からはずれているとか。
その願いや望みは、神様の力に頼るのではなく、あくまで自分の努力で未来を切り開いていく意思を神様に伝えましょう。
死を「穢れ」として考えている神社では、極楽浄土を望むことができないとされ、
死後の極楽浄土、または現世での幸せを願うのがお寺ということです。
どちらを願うかは、まつられている仏様によって決まります。
また、仏教において願うというのは、自分自身で環境や生活をより良いものにしていくという誓いを立てる、という意味になるそうです。
神社とお寺の建造物の違い
神社やお寺には、それぞれ特徴的な造りの建造物が存在します。
ここではよく見られる、代表的なものをみていきましょう。
神社の建造物
神社の象徴といえば鳥居ですね。
神社の入口にはたいていの場合、鳥居があり、神様の世界と人が住む世界とを
分ける境界線としての役割を持つとされます。
また鳥居や参道の両側には狛犬が設置され、神社を守っています。
「稲荷神社」では狐、「天満宮」では牛のように、神社によっては犬ではなく別の動物となっていることも。
鳥居の先にある参道の脇には手と口を清める「手水舎」、その先にご神体やご祭神がまつられている「本殿」というのが一般的な造りになっています。
神社で最も重要な場所である「本殿」は、神が宿る神聖な場所であることから目に触れることがないように配置されているそうです。
「本殿」には通常行くことができないため、手前にある祭祀や礼拝を行う「拝殿」でお参りをします。
お賽銭を入れて礼拝するのが、こちらの拝殿ですね。
また、お供えものをする場所の「幣殿」が、本殿と拝殿の間に設置されている場合もあります。
神社の建造物の屋根は、茅や檜といった自然由来の材料で作られていることが基本で、建物は高床式の板張りになっているのが特徴です。
このほか神社には、神楽や舞を奉納する神楽殿や舞殿、小規模規の摂社や末社、事務を取り扱う社務所などがあります。
寺の建物
お寺を象徴するのは、伽藍と呼ばれる建物群ですが、シンプルな作りの神社に比べると、建物の数が多く、より勇壮なのがお寺の特徴といえるでしょう。
お寺は、もともとは僧が修行をする場所でしたが、釈迦(ブッダ)が神格化していくにつれ、仏塔や仏像を収める仏殿などが誕生したそうです。
そんなお寺の入口に建つのが山門で、その両側にはお寺を守る守衛のような役割をもつ「仁王像」が安置されている場合もあります。
参道を抜けると、本尊の仏像を安置するお寺で最も重要な建物「本堂」が建っています。
金堂や仏殿とも呼ばれ、通常、お寺の伽藍配置は「本堂」を中心に他の建物が取り囲む形になるとか。
さらに、「仏舎利」と呼ばれる釈迦の遺体や遺物の一部を安置した「仏塔」は、三重塔、五重塔というような多重構造が多く、お寺のランドマークのような存在です。
他にも、僧侶が説法を行うための講堂として使われる法堂、書物や経典を収める経蔵、梵鐘が吊された鐘楼、僧侶が住む僧坊なども備えられています。
神社との大きな違いは、建物の屋根に瓦が使われていること。
お寺の建造物の屋根は、中国大陸から伝わった瓦でできていることが多く、重厚な作りになっています。
神社とお寺の御朱印の違い
御朱印とは、神社やお寺にお参りしたときに、その証として授けられる印を押した証明書。
本来、参拝者がお寺に写経を納めた時にいただく印だったとか。
ですから、必ず参拝してからいただくのがマナーです。
ただし、全ての寺社で行われているわけではありません。
神社とお寺で明確な違いはありませんが、神社の御朱印は、神社名、日付、印のみというシンプルなものが多く、真ん中に神社名が墨書きされ、その上に朱印が押されます。
朱印は1個から3個くらいまでと、神社によってさまざまです。
お寺の御朱印は一般的に寺社名、お参りした日付など、さらに本尊の名前が真ん中に墨書きされ、朱印が3か所、本尊の名前のところには、宝印(大昔インドで使われていた神仏を一字で表す文字=梵字が入った印)が押されます。
神社の御朱印が楷書に対して、お寺の御朱印は、文字を崩した形の豪快な墨書きが多いようです。
なお、神社では摂社や末社の御朱印、神事や祭事に合わせた限定の御朱印が、お寺では、御詠歌(仏教の教えやお寺の事を「五・七・五・七・七」の和歌にしたもの)や仏堂、仏像ごとに御朱印をいただける場合があります。
最後に御朱印帳を神社とお寺で分けるべきかということについてですが、一般的に、分けないといけないというルールはありません。
ただし、中には両方の御朱印が押された御朱印帳には押印できないという所も存在するそうなので、いただく前に確認しましょう。
また、御朱印帳は、神棚や仏壇などに置いて大切に保管するのが良いとされています。
まとめ
今回は、お寺と神社の具体的な違いを解説してきました。
知っているようで知らないことはありましたか?
最後に主なポイントをまとめとして振り返ってみましょう。
【神社とはどんなところ?】
・日本古来の宗教「神道」の施設
・神道は、自然崇拝に基づく宗教で「八百万(やおよろず)の神」をまつる
・神の住む神聖な場所や神聖な儀式を行っていた場所に建てられたのが起源
・神様として「ご祭神」または「ご神体」がまつられている
【お寺とはどんな所?】
・古代インドで生まれた釈迦を開祖とする宗教である「仏教」の施設
・仏教を信仰する僧侶が住み、教えを学んだり修行をしたりする場所
・さまざまな仏様がまつられ、そのお寺で最も重要とされる信仰の対象が「本尊」
・祈りの場として整備が進んだ歴史がある
【神社とお寺の参拝方法の違い】
・神社:お賽銭を奉納した後に深いお辞儀を2回、手を2回叩き、そのまま合掌して願い事を唱え、最後に一礼する「二礼二拍手一礼」が基本
・お寺:お賽銭を奉納した後、胸の前で両手を合わせて手を叩かずに合掌し、お祈りが終わったら一礼
【神社とお寺の建造物の違い】
・神社:鳥居、狛犬、手水舎、本殿、幣殿、拝殿、摂社、末社、神楽殿、舞殿
建物の屋根は、茅や檜といった自然由来の材料で作られている
・お寺:山門、本堂(金堂・仏殿)、仏塔(仏舎利)、法堂、経蔵、鐘楼、僧坊
建物の屋根には瓦が使われている
【神社とお寺の御朱印の違い】
・神社:神社名、日付、印のみというシンプルなものが多く、真ん中に神社名が墨書きされその上に朱印が押される
・お寺:寺社名、お参りした日付など、さらに本尊の名前が真ん中に墨書きされ、朱印が3か所、本尊の名前のところには、宝印が押される
違いを知って、ぜひ神社やお寺に参拝される際に参考にしてくださいね。